~口腔外科専門医が解説する「顎骨壊死」と歯科治療①~
【五條市の歯医者】今田歯科医院、副院長の今田光彦です。高齢化に伴い、骨粗鬆症の治療を受けている患者さんは年々増えています。
歯科診療の現場でも、
- 「骨粗鬆症の薬を飲んでいると抜歯はできないのですか?」
- 「歯科治療は危険と聞きました」
- 「顎骨壊死になる可能性があると聞いて不安です」
といったご相談を受けることが少なくありません。
骨粗鬆症の薬と歯科治療の関係については、インターネット上でもさまざまな情報があり、正しい情報が分かりにくいのが現状です。
そこで今回から数回にわたり、骨粗鬆症と歯科治療の関係について、口腔外科専門医の立場から分かりやすく解説します。
第1回では、
- 骨粗鬆症とはどのような病気なのか
- 骨粗鬆症の薬を飲んでいると抜歯はできないのか
- 顎骨壊死とはどのような病気なのか
- 顎骨壊死を予防するために大切なこと
について説明します。
■骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨密度の低下と骨質の劣化によって骨がもろくなる病気です。
私たちの骨は常に、
- 骨を作る働き(骨形成)
- 骨を壊す働き(骨吸収)
という2つの働きによって作り替えられています。

引用:橋本賢二,増本一真編 歯科衛生士のための全身ハンドブック 第1版,医歯業出版株式会社,東京,2023, 18頁.
これを骨代謝と呼びます。しかし、
- 加齢
- 閉経によるホルモン変化
- 生活習慣
などにより、このバランスが崩れると骨吸収が優位になり、骨量が減少していきます。その結果、
- 脊椎圧迫骨折
- 大腿骨近位部骨折
などの骨折リスクが高くなります。また骨折は、寝たきりとなる原因の第4位ともいわれています。

引用:東京都健康長寿医療センターHPより引用(https://www.tmghig.jp/about/hiketsu/5-genin/)
そのため現在では、多くの患者さんが骨粗鬆症の薬物治療を受けています。
■歯科治療と関係する骨粗鬆症の薬
骨粗鬆症の治療薬にはいくつか種類がありますが、歯科治療で特に注意が必要なのが骨吸収抑制薬
と呼ばれる薬です。代表的なものとして、
- ビスホスホネート製剤
- デノスマブ
があります。これらの薬は、骨吸収を抑えることで骨折を予防する非常に重要な薬です。
しかし、まれに薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)という合併症が起こることがあります。
■顎骨壊死とは
顎骨壊死とは、顎の骨の血流や骨代謝が障害されることで骨が露出し、治癒しにくくなる病気です。

引用:橋本賢二,増本一真編 歯科衛生士のための全身ハンドブック 第1版,医歯業出版株式会社,東京,2023, 22頁.より改変引用
多くの場合、
- 抜歯
- 歯周病
- 義歯による慢性的刺激
などがきっかけとなります。
しかし近年では、単に抜歯が原因というよりも長期間続く口腔内の感染が大きなリスクと考えられています。例えば、
- 重度歯周病の歯を長期間放置している
- 虫歯の歯を放置している
- 合っていない入れ歯を使い続けている
といった状態です。
以前は「抜歯をすること自体が顎骨壊死のリスクになる」と考えられていました。
しかし現在では、感染源となる歯を放置する方が顎骨壊死のリスクが高くなると考えられています。
つまり、顎の骨が長期間、細菌による炎症にさらされ続けることがリスクとされています。
また、合っていない入れ歯を使い続けることで自然発症するケースも報告されています。
入れ歯で傷ができやすい場合は、早めに歯科医院で調整することが大切です。
■骨粗鬆症の薬を飲んでいると抜歯はできない?
結論から言うと、多くの場合、抜歯は可能です。
ただし、以下のような点を総合的に確認する必要があります。
- 使用している薬の種類
- 服用期間
- 全身状態
- 歯周病の状態
必要に応じて、
- 主治医との連携
- 抗菌薬の使用
- 外科処置の工夫
などを行いながら慎重に対応します。そのため歯科受診の際には、
骨粗鬆症の薬を服用していることを必ず歯科医師に伝えることが重要です。
また以前は、抜歯前に骨吸収抑制薬を休薬することが推奨されることもありました。
しかし休薬によって骨折のリスクが高くなる可能性があることが指摘されています。
そのため現在では、休薬を行わず治療を進めるケースが多くなっています。
また、必要以上に顎骨壊死を恐れる必要はありません。
骨粗鬆症治療における顎骨壊死の発症率は非常に低いとされています。
報告では、その発症率は約0.01〜0.1%程度とされています。
ただし、がん治療などで高用量の骨吸収抑制薬が使用されている場合には、発症率が高くなることが知られています。
そのため、患者さんの全身状態や使用している薬剤の種類に応じて適切に対応していくことが重要と考えられています。
■顎骨壊死が起こった場合の治療
顎骨壊死が発症した場合、病状に応じて治療が行われます。初期段階では、
- 抗菌薬の投与
- 口腔内の清掃
- 刺激の除去
などの保存的治療が中心になります。症状が進行した場合には、
- 壊死骨の除去
- 外科的処置
が必要になることもあります。そのため、早期発見と予防が非常に重要です。
■顎骨壊死を予防するために
顎骨壊死の予防で最も重要なのは口腔内を健康な状態に保つことです。具体的には、
- 歯周病の治療
- 虫歯の治療
- 定期的な歯科受診
が重要になります。
歯の感染を放置すると、結果として抜歯が必要になりリスクが高まる可能性があります。
そのため、骨粗鬆症の治療を受けている方こそ早めの歯科受診と口腔管理が重要です。
また、顎骨壊死を恐れて骨吸収抑制薬の使用を避けることはおすすめできません。
骨吸収抑制薬は骨折予防において非常に有効な薬です。大切なのは、
- 薬の導入前に口腔内環境を整えること
- 導入後も定期的な歯科メインテナンスを受けること
です。
■まとめ
骨粗鬆症の薬を服用している場合でも多くの歯科治療は安全に行うことが可能です。ただし、
- 薬の種類
- 服用期間
- 全身状態
によっては注意が必要な場合があります。歯科受診の際には、必ず骨粗鬆症の薬を服用していることを歯科医師に伝えるようにしましょう。
【五條市の歯医者】今田歯科医院では、骨粗鬆症の治療を受けている患者さんの歯科治療にも対応しています。
抜歯や歯科治療について不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
